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先輩と後輩のこと

 この10月に新たなメンバー4名(3年生)を迎えた澤井研究室である。昨年度の新メンバーが0名という背筋も凍るトラウマを乗り越え、晴れて今年はちゃんと新メンバーを迎えたわけである。

いや、実におめでたい!

 

 と、いうわけで俄然忙しくなったのは現修士1年生の2名である。何しろ本来ならいるべき現4年生がいないので、新人に色々な事を教えるのは二年上級の彼らの役目なのである。実験室の掃除の仕方に始まり、MilliQ水の汲み方、基本培地の作り方、pHの測り方などなど実に多岐にわたることを後輩に指導している彼らの姿は、実に「頼りになる先輩」である。

 

 そんな「頼りになる先輩」であるが、内実はまさに薄氷を踏む思いで、もしくは白鳥が水面下で激しく足をばたつかせているように後輩を指導している事を後輩は知らないのである。

 

 なぜ私がそんなに自信満々に彼らがどのような心境で後輩指導にあたっているのかがわかるのか?

 

 なぜなら、私も学生に指導するとき、けっこうな頻度で薄氷を踏む思いをし、ときに薄氷を踏み割ってドボンしているからである。余裕しゃくしゃくに質問に答えているふりをしながら、まさに心の中では白鳥が全速力で犬かきをしているのである。

 

 だから、きっと彼らもそうであるに違いない!と、思うわけなのである。

 

 けれど、後輩(または学生)への指導というのは、それでいい。

間違ったことを教える訳にはいかないから焦るのであり、間違ったことを教えないように、不意の質問に答えることができるように、今まで漠然とこなしていたルーチンワークを再度自分なりに見直し、不意の質問に答えられるよういろいろなことを新たに勉強するのである。後輩にみえないところで。

 

 よく「人に教える事で自分の勉強になる」と言うが、その通り。修士の彼らは今、身をもってそのことを実感しているに違いない。無事にこの新人トレーニング期間を乗り越えれば、後輩も、そしてそれ以上に先輩がたくましくなるのである。まさに「教えながら学ぶ」のである。

 

 だから、がんばってね、東間先輩!と皆川先輩!

 

2016年10月28日

澤井 健